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事例紹介
協会ビジネス研究会 第1回事例発表会
2025年10月6日
プロデューサー型&カリスマ型の協会のつくり方
登壇者
一般社団法人キレイデザイン協会 大沢清文さん
一般社団法人日本声診断協会 中島由美子さん
モデレーター
一般社団法人協会ビジネス推進機構 前田健志
はじめに ~協会ビジネスの今を語る~
前田健志(以下、前田)
それでは始めていきたいと思います。「協会ビジネス研究会2024」ということで、協会ビジネスも時代が大きく移り変わり、2007年に生まれてからもう17年。大沢さんも中島さんも、もう10年近くやってこられています。
実際、昔と比べるとビジネスモデルが大きく変化してきました。今回この研究会では、そういった最新の協会ビジネスのモデルや現場の事例について、正しい知識・事例がなかなか伝わっていない部分もあるので、しっかり共有していきたいと思っています。
今日が第1回、最初の事例発表会ということで、キレイデザイン協会の大沢さんと日本声診断協会の中島さんに来ていただきました。お忙しい中、ありがとうございます。
大沢清文さん(以下、大沢さん)
よろしくお願いします。
中島由美子さん(以下、中島さん)
よろしくお願いします。
前田
今日お二人にご登壇いただいた理由は、「プロデューサー型」と「カリスマ型」、それぞれの協会モデルの作り方をテーマにしたかったからです。大沢さんはプロデューサー型、中島さんはカリスマ型。作り方のタイプが全然違うので、そのあたりを中心にいろいろと伺いたいと思います。
まずは大沢さん。プロデューサー型として、いわゆる「講師を養成してコミュニティを作り、育成していく」モデル。皆さん、大沢さんがやっているようなプロデューサーとして、講師を押し上げていくパターンのイメージを持たれている方も多いのかなと思います。
大沢さんのキレイデザイン協会のパターンと、中島さんのカリスマ型のパターンは、お客様の集め方やコンテンツの使い方、講師とのつながり方が全然違ってきます。その違いを踏まえて、どうやって協会を作ってきたのか、今どのように協会を動かしているのか、苦労や難しさなども含めてお話を聞いていきたいと思っています。
では順番に、一人20~25分ずつお話を伺っていきたいと思います。最初はキレイデザイン協会の大沢さん、よろしくお願いします。
キレイデザイン協会 大沢清文さん:プロデューサー型モデル
前田
はい、改めましてよろしくお願いします。大沢さんとはもう10年近い付き合いですよね。僕がサラリーマン時代からなので、協会名も昔は違っていました。そのあたりの最初の失敗談なども含めてお話できたらと思います。
大沢さん
キレイデザイン協会は、もともとISC個性心理学という動物占いを作った先生のコンテンツと、私がエステティックサロンを経営していたときの色彩心理、この2つを組み合わせてできたものです。
協会設立と同時にZoomも導入しました。当時は地方在住で、毎週東京に行くのが大変だったので、オンラインでも働ける仕組みを考えました。今では旅をしながら仕事ができるようになりました。協会の認定講師は全国に700名くらい、海外にも7〜10カ国くらいに広がっていて、受講生は5000人を超えています。本も去年は絵本を出したり、紙の本や電子書籍を含めて12冊くらい出版しました。
協会のビジネスモデルと運営の工夫
前田
すごいですね。動物占いと色彩を組み合わせているとのことですが、どんな人にどんなコンテンツを提供しているのでしょうか?
大沢さん
一番は人間関係の悩みを解決するためのコンテンツです。色は12色ですが、全部覚えるのは大変なので、まずは3つのコミュニケーションパターンからスタートします。
大きく分けて3つ。
1つは「人間関係をよくする」。このコンテンツを使うと、タイプ別で人間関係がスムーズになります。
2つ目は「色の勉強」。色は女性にとって心を豊かにするので、ファッションやメイクなどに色を使います。
3つ目が「運気」。運気を見える化して、その年の色で未来を想像できるようにしています。協会の理念は「人生をもっとキレイにカラフルに」。生活を豊かにするためのコンテンツです。
前田
お客さんは女性が多い?
大沢さん
はい、ほぼ女性です。最近は起業したい人、副業したい人が増えています。最初は職場や家庭の人間関係の悩みが多かったのですが、今は集客や講座ビジネスをやりたい方が増えました。講師業をやっている人が多く、協会自体が講師を育成する仕組みになっています。
前田
講師になった方の先にいるお客さんはどんな方が多いですか?
大沢さん
やはり起業したい人、副業したい人が多いですね。最初の一歩を踏み出せない方、商品づくりが難しい方も多いです。私の元に直接来られる方はグランドマスター、その先は初心者が多いです。
ツール開発と継続する仕組みづくり
前田
ビジネスとして使いやすいツールが強みですよね。どんな仕組みになっているのでしょう?
大沢さん
「キレイデザインネット」というシステムを開発しました。生年月日を入れると個性・リズム・タイプ診断ができて、テキスト教材や講座資料もすべてその中に入っています。診断書を自動で発行・販売できたり、無料診断でリスト獲得もできます。家事・育児の合間に5分で準備してセッションできるシンプルさを大事にしています。
前田
女性が家事・育児の合間にすぐ取り組めるように設計されているんですね。
大沢さん
そうです。教材も全部ネットにあって、女性がとにかく簡単に活動できるように設計しています。
前田
開発コストや労力もすごかったのでは?
大沢さん
本当に時間もお金もかかりました。もともとはザウルス、ソニーのパーム、Windowsソフトと何度も作り直して、20年近くかけて進化させてきました。累計では億単位のコストがかかっていると思います。
前田
そこまでやっているからこそ、他が真似できない強さになるわけですね。
大沢さん
そうです。他が真似できない強みを作るには10年単位で取り組む必要があります。協会って2年じゃできない。私は2015年に協会を作ったとき、2025年には世界中を旅しながら協会が伸び続けるモデルにしたいと決めていました。10年計画で進めて、去年ようやく完成した感じです。
コミュニティ運営と組織デザイン
前田
コミュニティの継続や内部運営も独特ですよね。
大沢さん
はい。ティール組織を目指していて、縦割りや競争をせず、横のつながりを強めています。講座を終えた受講生のためのコミュニティや、ビジネスを学ぶためのサブスク型フォロー体制もあります。認定講師やグランドマスターには、月額課金のコミュニティ運営収益が安定して入る仕組みです。みんなで横断的にフォローし合い、競争ではなく共創を重視しています。
理念と仲間づくり・失敗からの学び
前田
理念や価値観を毎回伝える工夫もされているとか?
大沢さん
必ず30分くらい理念や未来ビジョンを語る時間を設けています。テキストにも理念を載せて、やり方だけでなく「在り方」に共感する人が残るコミュニティ作りを徹底しています。10年経っても熱く語れる理念じゃないと続かないし、トップが理念を語り続けることが大事です。
前田
やり方だけ学びに来る人もいますよね?
大沢さん
いますね。でも、やり方だけ求める人はだんだん離れていきます。「あり方」や理念に共感できる人が残り、好きな人たちと理念を形にしていく。これが協会ビジネスの本質だと思っています。
前田
これまで「これは失敗だったな」ということは?
大沢さん
よくあるのが「認定講師が動かない」という悩みですが、株式会社と協会では全く仕組みが違うんです。協会はお給料を払っているわけではなく、会員さんからお金をいただくモデル。だから理事長が一番動き、その熱量で皆を巻き込む必要がある。「認定講師が動かない」のは理事長自身が動いていないから。株式会社モデルの意識でやるとうまくいきません。
前田
理事長が自ら動き、理念を体現し続けることが大切なんですね。
大沢さん
まさにそうです。理事長が自分の協会の理念や未来を熱く語り続けていると、共感した人たちがどんどん動いてくれます。
前田
本当に勉強になるお話をありがとうございます。では続いて、中島さんのカリスマ型の協会モデルについてお話を伺います。
日本声診断協会 中島由美子さん:カリスマ型モデル
中島さん
私は「声診断」というメソッドを提供しています。声をパソコンのソフトで測定し、人の心を12色・12音階で可視化するメソッドです。18年前から、人の心と音階の関係を探究し続けてきて、ようやく今の形になりました。ちょうど協会設立12年目になります。
最初の7年は独自にやってきましたが、途中で壁にぶち当たりました。今から5年前に前田先生のところに伺い、そこから劇的に良くなりました。最初は「協会に向いていない」と言われたこともあります(笑)。自分のタイプに合った協会の作り方をしないと、運営者がすごくしんどくなるということを学びました。
前田
確かに最初は大変そうに見えましたよね。やっぱり自分のタイプに合った作り方をしないと、協会運営は続かないなと感じました。
中島さん
そうなんです。最初から作るのは簡単ですが、7年間こじらせてきたものを立て直すのは大変で…そこから今の形にするまでに4〜5年かかりました。
今はクラウドファンディングもやっていて、たくさんの方に支援してもらっています。ありがたいことに、認定講師さんが勝手に応援し合う空気ができていて、イベントなども自主的に盛り上がっています。
声診断という、最初はどこの馬の骨とも分からないメソッドでしたが、今は大手企業にも導入され、特許も取得しています。本も続々出版できるようになりました。こうした成果が出ているのは、本当に仲間のおかげだと感じています。
仲間・ブランドづくりと苦労の乗り越え方
前田
協会をやってきてよかったと感じる点、逆に大変だったことは?
中島さん
よかったことは、いい仲間だけが最後に残ることですね。そして協会が社会から信頼される「看板」になったことです。大変だったのはコンテンツが真似されるリスクです。でも理事長会のグループで相談したり、仲間の助けで特許を取れたことが大きいです。前田先生にも「ブランドを徹底的に高めるほうがいい」とアドバイスをいただき、今はそれが成果につながっています。
前田
ブランド構築が何よりの防御策になる、と。
中島さん
本当にそうです。もう一つ大変だったのは、講師の方と私がライバル関係になってしまったこと。昔は「中島さんには負けたくない」と言われたり、離れていく人もいました。でも、そこにエネルギーを注ぐのはやめて、自分のブランディングやコンテンツの進化に注力するようにしました。
カリスマ型で成果を出す工夫・新たな仕組み
前田
カリスマ型は「自分の発信力や存在感」が核になっていますが、それを確立するためにどんな工夫を?
中島さん
私はもともと人に気を使いすぎるタイプだったので、講師の教育やマネジメントに時間を取られ、本領を発揮できていませんでした。前田先生に「中島さんブランドをもっと光らせる方向にシフトして、サポートは仲間に任せる方がいい」と言われて、その通りにしたらとても楽になりました。
出版をきっかけに300人以上が集まってくださり、講座やイベントも満席が続くようになりました。今はAさん(エンドユーザー)向けの講座とPさん(プロ向け)の講座の2本柱で展開しています。
前田
VRPという講座では、毎回50名ずつ集めているそうですね。運営はどんな仕組みですか?
中島さん
新規50名、再受講50名で合計100名のオンライン講座を毎回やっています。その50名に対して、資格を持った音声心理士が1対1で声診断セッションを提供します。講師のスキルもブラッシュアップでき、参加者も効果を実感できるので、相乗効果があります。
前田
当初は、理事長が講座をやらないというモデルもありましたが、今はコンテンツがあふれている時代なので、講師の方がなかなか販売しづらい世の中になっていますよね。なので、中島さんのように理事長が前面に出て、ブランド力を高め、育成した講師がサポートするという仕組みがうまくまわっているのかなと思います。
サポートと自律的なコミュニティ運営
前田
講師の育成やマネジメントはどんな工夫を?
中島さん
最初はコントロールしようとしがちでしたが、今はある程度自由に任せています。「お客さんは私が集めるから、みんなでアイデアを出して育ててください」と伝えています。そうするとティール組織のような自律的なコミュニティが生まれ、私は旗から見てアドバイスをするだけになりました。
講座ビジネスとの違い・両輪で広がる可能性
前田
講師さんのマネジメントもあるし、「講座ビジネスの方が楽じゃない?」と言われることはなかったですか?
中島さん
はい。でも講座ビジネスだと一人のキャパに限界があります。協会でしっかり認定講師を育てれば、より多くのお客様に価値を提供できます。両輪のようなビジネスモデルが理想ですね。
前田
自分のブランドを立てるのが得意な人には、カリスマ型も十分可能性があるということですね。カリスマ型に向いていないと思っていた方も、今では成功事例が増えてきています。みんなが幸せになれる仕組みを一緒に作っていけたらいいですね。
前田
今、お二人のお話を伺って、タイプもアプローチも全然違うのに、どちらも「理念」や「仲間の力」「継続した仕組みづくり」をとても大切にされていることがよくわかりました。
協会を作るか迷っている人にとっても、それぞれに合った形があると知ることは大きいと思います。では最後に、協会ビジネスを考えている方に向けて、一言ずつお願いします。
おわりに・協会ビジネスに挑戦する方へのメッセージ
大沢さん
協会ビジネスは社会を良くするためのモデルであり、継続のために収益も大切です。どう社会に貢献するか、社会に何を残したいかを考えて取り組むことが大事です。そのためにもしっかり稼ぎつつ、みんなで社会を良くしていけたらと思っています。
中島さん
協会ビジネスを通してできた仲間は一生の宝物です。競争社会の中でも「思いひとつ」でつながれるビジネススタイルを、日本にもっと広めたいと思っています。協会には十人十色の形があります。自分に合った協会の形をプロに引き出してもらえれば、その後は楽になりますし、仲間と一緒に大きな未来を描けると思います。
前田
ありがとうございます。やり方だけでなく「在り方」や「理念」、そして仕組みを大事にすることで、関わるみんなが幸せになれる協会ビジネスモデルを一緒に広げていきましょう。