協会ビジネス

協会ビジネス研究会 第2回事例発表会

2025年10月6日

チームメンバーを活躍させるためのマネジメント術

登壇者
一般社団法人日本ペット服手作り協会 武田斗環さん
一般社団法人日本抜毛症改善協会 中川英博さん
モデレーター
一般社団法人協会ビジネス推進機構 前田健志

 

前田
では始めていきたいと思います。本日は「協会ビジネス研究会」の事例発表会、第2回です。今日のゲストは、日本ペット服手作り協会の武田さん(とわちゃん)、そして日本抜毛症改善協会の中川英博さん(なかちゃん)のお二人です。どうぞよろしくお願いします。

 

武田さん・中川さん
よろしくお願いします。

前田
今回お二人をセットでお呼びした理由は、「講師マネジメントの上手さ」に注目したからです。協会運営において、講師の育成・マネジメントは本当に難しいところですが、それぞれ異なるタイプのやり方で成功されています。今日はそのあたりを深掘りさせていただきます。

日本ペット服手作り協会 武田斗環さん

前田
まずは武田さん、協会についてご紹介いただけますか?ターゲットや活動内容などを教えてください。

 

武田さん
はい。私たちは「日本ペット服手作り協会」という名前のとおり、ペットの洋服を作る技術を広めています。ターゲットは、自分のペットに服を作りたい方から、将来的にブランドを立ち上げたい方、そして協会に所属して講師をしたい方まで幅広いです。主な活動は、講師の育成と、講師が使える教材の開発ですね。

 

前田
生徒さんはやはり女性が多いですか?

 

武田さん
そうですね。99%女性です。趣味で学ぶ方もいれば、教えられるようになりたい方も多いです。

協会立ち上げの背景

前田
協会は今年で何年目ですか?

 

武田さん
今年12月で10周年です。

 

前田
10年続けるのは本当に大変だと思います。そもそもなぜ協会にしようと思われたんですか?

 

武田さん
最初は大阪で普通の手芸教室をやっていたんですが、全国から生徒さんが来られて。これは広げられるなと思いましたし、女性の自立を助けたいという思いもずっとあったので、協会にしました。

講師の育成と講座開講率

前田
現在、認定講師は何人ほどいらっしゃるんですか?

 

武田さん
100人ちょっとで、そのうち6割が教室を運営しています。

 

前田
通常の資格ビジネスだと活動率は2割程度が多いですが、6割はすごいですね。その秘訣は?

 

武田さん
「認定講師講座」にあると思います。教え方を教えるんです。入門講座をどう教えるかを、先生自身が指導要綱を作りながら学びます。教育実習のような形ですね。だからすぐに講座が開ける。

 

前田
なるほど。通常は内容だけを伝えて終わるケースが多いですが、武田さんのところは「すぐに講座を開ける状態」をゴールにしているんですね。

継続する仕組みと文化づくり

前田
生徒さんはどれくらい続けて通われるんですか?

 

武田さん
5年、6年と続く方も多いです。新規を常に集めなくても成り立つので、先生同士で生徒を紹介し合うこともあります。

 

前田
紹介文化ができているのはすごいですね。

 

武田さん
「講師の資質」として、人権尊重を掲げていて、それを認定講師講座で伝えています。つまり「人に嫌なことをしない」「相手が本当に求めていることを考える」という姿勢です。また、先生たちが自分のやりたい方向性をシェアすることで、ターゲットが明確になり、お互いに紹介し合える環境ができています。

講師育成に時間をかける理由

前田
講師育成にはかなり時間をかけているそうですね。

 

武田さん
はい。最低でも2年です。短期間で資格を出す協会もありますが、引き出しがないと教えられません。経験と体感を積んでもらう必要がある。だから長くしています。

 

前田
通常の「3日で資格取得」とは真逆のやり方ですね。でもだからこそ、活躍できる講師が多く、協会愛も強い。結果的に長く続く組織になっているんだと思います。

法人と収益の仕組み

前田
協会は収益よりも社会的機能を重視し、法人(株式会社ミラミラ)で型紙や洋服販売を行っているんですよね。

 

武田さん
そうです。協会優先を徹底していて、新作は必ず協会が先。3か月後に自社販売です。先生方が不安にならないよう、1年前から告知もしています。

 

前田
協会に「クリーンなイメージ」を残しつつ、法人で収益を上げる。住み分けが上手ですね。

 

武田さん
ただ、住み分けが曖昧になることもあるので、何度も自分に確認しています。特許の扱いも含めて慎重にしています。

日本抜毛症改善協会 中川英博さん

前田
それではここからは中川さんにお話を伺います。まずは「日本抜毛症改善協会」について教えてください。どんな方をターゲットに、どんな活動をされているのでしょうか?

 

中川さん
はい。名前から「抜け毛を改善する協会?」と誤解されることも多いのですが、対象は「自分で自分の髪を抜いてしまう」抜毛(ばつもう)症の方です。メンタル面の要素が強く、脅迫性障害の一種とされることもあります。そうした方々を改善に導くため、理美容室をベースにした仕組みを作り、全国のカウンセラーと共に活動しています。

 

前田
そもそも協会を作ろうと思ったきっかけは?

 

中川さん
私は元々美容師なんですが、ある時、自分の髪を抜いてしまう人に出会いました。ブログなどで情報発信をしていたら、神戸の私のところに北海道や沖縄からも来られるようになったんです。もう自分一人だけでは対応しきれない、というところから協会設立につながりました。

抜毛症の実態と課題

前田
実際、抜毛症で悩む方は多いのでしょうか?

 

中川さん
はい、人口の1〜2.5%ほど、250万人以上と言われています。だんだん増えていると感じますね。

 

前田
通常そういう方々はどういうところに行くんですか?

 

中川さん
多くはスクールカウンセラーを通じて皮膚科や精神科に行きます。でも薬を出されるだけで、改善はほとんどしません。

美容師だからできること

前田
そこで美容師さんが関われる余地がある、と?

 

中川さん
そうです。病院では髪を扱えませんが、美容師ならウィッグやカットなどでカバーできます。見た目を整えながら改善につなげられるのは大きいです。

誰でも対応できる仕組み ― システム化

前田
ただ、普通の美容師さんには難しいですよね?

 

中川さん
はい。だからこそシステムを作りました。膨大なデータをもとに、原因や衝動のパターンを統計化し、プログラム化したんです。質問項目が表示され、答えを入力すれば点数化されます。

 

前田
点数化?

 

中川さん
はい。カウンセラーで対応できるかどうかが数値で分かるんです。危険なら病院に行くべき、と即判断できます。これでカウンセラーを守り、患者さんも守る。

物理的な支援グッズの開発

前田
システム以外の工夫もありますか?

 

中川さん
あります。行動療法だけでは不十分なので、物理的に「抜けないようにする」グッズを開発しています。特殊なテーピングやバイブレーション装置、抜毛防止キャップ、スマホ操作できる指サックなどですね。これらを組み合わせて改善率を高めています。

講師(カウンセラー)の質の担保

前田
カウンセラー教育はどうされていますか?

 

中川さん
養成講座に時間をかけるのはもちろんですが、最大の特徴は「年1回の更新試験」です。必ず全員が受けなければならず、点数に満たなければ再試験。その間は新規クライエント対応はできません。

 

前田
かなり厳しいですね。

 

中川さん
でもだからこそ勉強せざるを得ないし、理念や法律知識も毎回再確認できます。大きなトラブルが起きていないのはそのおかげだと思います。

横のつながりと事例共有

前田
講師同士の関係性はどうですか?ライバルになりませんか?

 

中川さん
むしろ仲間意識が強いです。グループLINEで必ず事例を報告し合います。「今回は80点でした」「画像でこれだけ改善しました」と共有して、みんなで学び合う。お客さんは協会を通じて振り分けられるので、取り合いにならないのも大きいです。

医療業界との関係づくり

前田
ただ、医療業界と競合する懸念もありますよね?

 

中川さん
その点は意識しています。対立するのではなく、一緒に取り組める関係を大切にしたいと考えています。学会で発表したり、医師の方々と名刺交換をしてつながりをつくったりすることで、認知度を高めながら良い形で協力関係を築いていくことが重要だと思っています。

成功の要因

前田
本当に最初は「難しいのでは」と思いましたが、ここまで発展した要因は?

 

中川さん
やはり「仕組み化」です。システムで守る、物販で支える、試験で質を高める。そして医療業界と対立せず、協力関係を築く。この積み重ねですね。

 

前田
素晴らしいです。まさにニッチだからこそ強いポジションを築けていると感じます。

 


前田
いや、本当にお二人の取り組みには多くの学びがありました。

  • 武田さんは「講師育成に時間をかける」という逆張りのスタイルをとりながら、講師同士が紹介し合える文化をつくり、協会と法人を住み分けて長期戦略を描いている。
  • 中川さんは「システム化」に徹底的に投資し、講師・患者・協会を守る仕組みを整え、さらに医療業界とも連携しながら確固たるポジションを築いている。
     

どちらも共通しているのは「講師の成功を最優先に考えている」という点です。
結果として、協会そのものが信頼を得て長期的に成長しているのだと思います。

 

最後に

前田
最後に、これから協会を立ち上げたい人や運営に悩んでいる方へ一言ずつお願いします。

 

武田さん
自分が困ったことは、他の協会の理事長も経験しているかもしれません。すでに解決策を持っていることも多いので、前田先生や他の理事長さんに相談してみると必ずヒントがあると思います。

 

中川さん
協会で儲けようとすると失敗します。まず講師さんに収益が立つ仕組みを作ってあげること。講師が活躍して初めて協会にリターンが返ってくる。早い段階でキャッシュポイントを持たせてあげることが大切だと思います。

 

前田
ありがとうございました。
本当にお二人の実践は、協会運営を志す方にとって大きなヒントになると思います。

今日の発表内容だけでも十分に学びがあったのではないでしょうか。
ぜひ皆さんの協会運営にも活かしていただければ嬉しいです。